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「会社が民事再生になり、別の会社に引き継がれるらしい」
「提示された『転籍同意書』にサインを急がされているけれど、本当に大丈夫なのだろうか?」
職場の経営破綻や、組織再編という大きな波に直面したとき、誰もが真っ先に抱く不安です。
一見、同じように「会社が変わる」手続きに思えますが、そこで働く従業員の雇用契約や労働条件の扱いには、天と地ほどの「決定的な違い」があります。
今回は、社労士の勉強を通じて労働法のルールを学び、崩壊する組織の最前線で自分の身を守った私の経験から、会社分割と事業譲渡における従業員の権利と、転籍同意書を急かされた時の正しい対処法を分かりやすく解説します。
「会社分割」は自動承継が原則。労働契約承継法が従業員を守る仕組み
まず、会社が「会社分割」という方法で事業を別会社に移すケースについてお話しします。
会社分割の場合、法律上は「労働契約承継法」という非常に強力な従業員保護のルールが適用されます。
この法律により、分割される事業に「主として従事している従業員」の雇用契約や労働条件は、本人の同意がなくても、原則として新しい会社にそのまま「丸ごと」自動的に引き継がれます 。
給与、休日、勤続年数といった条件も、基本的には分割前と同じものが維持されなければなりません。
「会社分割を理由に従業員を一方的にリストラする」といった暴挙は、この法律によって厳しく制限されているのです。
「事業譲渡」は自動で引き継がれない?従業員一人ひとりの「同意」が必須となる民法の壁
一方で、弊社が辿ったような「事業譲渡」という方法で別のスポンサー企業に再建を委ねる場合は、ルールが全く異なります。
事業譲渡は、会社法上の組織再編ではなく、単なる「事業(資産や契約)の売買」に過ぎません。
そのため、労働契約承継法は適用されず、あなたの雇用契約は自動的には新しい会社に引き継がれません。
新しい会社に移籍(転籍)するためには、民法第625条第1項に基づき、従業員一人ひとりの「個別の承諾(同意)」が絶対に必要となります。
つまり、会社側が「明日からあっちの会社に行ってくれ」と強制的にあなたを転籍させることは、法律上不可能なのです。
あなたが同意書にサインをしない限り、その転籍は成立しません。
「転籍を拒否したら解雇される?」従業員が持つ正当な権利と会社側の義務
「もし、転籍同意書へのサインを拒否したら、その場でクビにされてしまうのでは?」
そんな風に不安を感じて、提示された条件をよく確認せずにサインを急いでしまう人はとても多いです。
しかし、安心してください。
「転籍を拒否したこと」のみを理由として、会社があなたを解雇することは法律上許されません。
事業譲渡への不同意を理由にした一方的な解雇は不当解雇にあたり、労働契約法に抵触する可能性が極めて高いからです。
会社側は、転籍を拒否した従業員に対しても、元の会社での雇用を維持するための努力(他部署への配置転換など)を尽くさなければなりません。
元の会社が完全に閉鎖されて雇用継続が不可能な場合でも、それは自己都合ではなく、国から手厚い保障が受けられる「会社都合(特定受給資格者)」としての退職扱いになります 。
トントンと手を叩く1歳の娘。私の「盾」をさらに強く鍛えてくれた温もり
「このまま転籍して、給料を下げられたらどうしよう」
当時、本部に座りながら、急かされる転籍同意書を前に、私は焦りと不安でいっぱいでした。
しかし、深夜に帰宅して、まだ言葉は話せない1歳の娘の寝顔を見つめていたときです。
よちよちと近づいてきて、小さな温かいてのひらで、私の手をトントンと優しく叩いてくれた娘。
その無垢な仕草と、小さな体温に触れた瞬間、私の頭の中にあった「会社にしがみつかなければ」という呪縛が、綺麗に消え去りました。
「この子の笑顔を守るためなら、私はどんな波風も恐れない。正しいルールを武器にして、絶対に妥協しない」
娘の無言のトントンが、私を奮い立たせ、社労士のテキストでこの「労働契約の承継ルール」を徹底的に調べ上げる力をくれました。
以前の記事「給料が未払いでも諦めない!社労士受験生が教える「未払賃金立替払制度」のすべて」や「「有給や退職金は消える?」民事再生・事業譲渡で会社が変わる時の従業員のリアルな末路」で学んだ知識を総動員して、私は提示された労働条件の細部まで確認しました。
もし、有給が勝手にリセットされたり、あまりにも不当な条件を押し付けられたりするなら、同意書を突っぱねて新しい船(転職)へ進むべきです。
「倒産や経営破綻は不利にならない!本部事務員が教える「履歴書の書き方」と面接の伝え方」に沿って準備をすれば、バックオフィスとしてのあなたの価値は、次の新しい職場で正当に評価されます。
サインをする前に、あなた自身の「生存条件」を見極める
会社が「会社分割」をするのか、「事業譲渡」をするのか。
その手法の違いによって、私たちが主張できる権利は大きく変わります。
経営陣や弁護士から「手続き上、今日中にサインして」と迫られても、絶対に焦って署名・捺印をしてはいけません。
転籍は、あなたが「自分の大切な未来」を新しい会社と契約し直す、最も重要な決断の場です。
大切な1歳の娘の笑顔、そしてあなた自身のこれからの人生のために。
バックオフィスの段取り力と正しい知識を武器にして、あなた自身の完璧な「生存戦略」を実行していきましょう。